歯周病治療

歯周病治療

歯周病とは

歯周病は、歯に付着した歯垢が原因で歯周組織に炎症を引き起こす病気です。
歯垢には数億もの細菌が存在し、その中に含まれる歯周病原因菌が毒素を出し、歯ぐきを傷つけます。
放置すると、歯垢は唾液中のミネラルと結びついて固い歯石となり、これが原因で歯周病が悪化します。
歯石は除去が難しく、その周囲には歯周病原因菌がさらに増殖しやすい環境を作りだすのです。
これにより、毒素が周囲の歯ぐきをさらに傷つけ、歯を支える骨が溶かされてしまいます。
歯がぐらつくのはこの骨が溶けた結果で、最悪の場合、歯が抜けてしまいます。
日本人が歯を失う原因の第1位は、むし歯ではなく歯周病です。

歯周病と全身の健康

歯周病はお口の中だけの問題ではなく、全身の健康にも悪影響を与える可能性があります。歯周病菌は血液にのって全身を巡り、さまざまな病気の原因や悪化要因になることがわかっています。
たとえば、以下の疾患が歯周病と深く関わっています。

  • 心疾患や脳梗塞
  • 糖尿病や誤嚥性肺炎
  • 骨粗しょう症
  • 低体重児出産や早産
  • 認知症

歯周病を予防・治療することで、全身の健康リスクを軽減できることが期待されています。

歯周病治療の流れ

初期検査

まず、歯周病の進行状況や原因を特定するための検査を行います。
レントゲン撮影や歯周ポケットの深さの測定、ブラッシング方法の確認を通じて、日常的な歯磨きが適切かどうかも調べます。
誤った磨き方は歯垢の蓄積につながるため、早期に改善することが重要です。

初期治療

歯の汚れや歯石を取り除きながら、歯ぐきの改善を図ります。
特に初期段階では、患者様や歯ぐきへの負担を最小限に抑えた治療を行います。
歯石の原因は正しいブラッシングができていない場合が多いため、正しい磨き方の指導も並行して行います。

再評価

初期治療後、治療効果を評価します。
歯石除去やブラッシング指導だけで改善しない場合、外科的治療が必要になることもあります。

外科治療(必要に応じて)

初期治療で効果が見られない場合、歯ぐきを切開して歯槽骨周囲の歯石や炎症部分を徹底的に除去します。
この治療では、歯ぐきを一度切開し、歯槽骨の奥に潜む原因菌や歯石を取り除き、健康な状態に近づけます。

SPT(歯周病安定期治療)

歯周病の治療を終えた後、健康な状態を維持するために予防的な治療(SPT)を行います。
歯石が再度蓄積すると歯周病が再発する可能性があるため、歯石除去やブラッシングチェックを定期的に行います。

中等度歯周病の治療方法

フラップ手術

フラップ手術とは

歯周病が中程度から重度に進行した場合、スケーリングだけでは除去できない歯石を取り除くため、歯ぐきを切開する「フラップ手術」が行われます。
この手術では、歯周ポケットを浅くして、細菌や歯石が溜まりにくい状態を目指します。

手術の流れ

  1. 歯ぐきを切開してプラークや歯石を徹底的に除去します。
  2. 歯ぐきを元の位置に戻して縫合します。
  3. 炎症が徐々に収まり、健康な状態を取り戻します。

歯肉弁根尖側移動術(APF)

歯肉弁根尖側移動術(APF)とは

歯周ポケットが深い場合や歯ぐきの幅が狭い場合に行う治療法です。
歯肉を切開して位置を調整し、歯周ポケットを減少させることで清潔な環境を整えます。
術後、歯根が一部露出することで歯が長く見えることがありますが、セルフケアの徹底が重要な条件となります。

手術の流れ

  1. 歯ぐきを切開して歯石や汚れを除去します。
  2. 必要に応じて骨を削り、歯ぐきを根っこの方向へ移動させて縫合します。
  3. 歯ぐきが治癒して歯周ポケットのない状態が完成します。

歯周組織再生療法

歯周組織再生療法とは

歯周病により失われた歯周組織(歯ぐき、骨など)を再生させる治療です。
この治療では、歯肉を切開して薬剤を使用し、組織の再生を促します。
治療には6ヶ月から1年程度かかる場合がありますが、抜歯を回避できる可能性が高まります。

手術の流れ

  1. 骨膜を骨に残すよう配慮しながら、歯ぐきを切開します。
  2. 歯石や細菌で汚染された組織を丁寧に取り除きます。
  3. 切開した歯ぐきを根尖側(歯の根の先端方向)に移動させ、縫合して固定します。
  4. 治療後は歯ぐきの回復を待ちます。

歯ぐきは歯冠側(歯の上部方向)に引き締まり、歯周ポケットが改善されます。
治癒にはおよそ2〜3週間かかります。

当院が歯周病治療で大切にしていること

患者様ご自身で維持できるように

患者様ご自身で維持できるように

歯周病は、口腔内に存在する常在菌によって引き起こされる病気で、一度かかると完全には治りません。
そのため、治療の目標は現状維持となります。
当院では、患者様が日々のホームケアを継続しやすいように丁寧な指導を行い、治療後も定期的な管理を続けています。

清潔さを保ちやすい歯にする治療

患者様がセルフケアをしやすいよう、汚れが付着しにくい被せ物や、清掃性の高い治療法を提案しています。
また、清掃性の低いブリッジ治療を避けるなど、長期的にお口の中を清潔に保てる治療を心がけています。

保険診療による定期的な管理

当院は「口腔機能管理強化認定歯科診療所」として、歯周病安定期治療(SPT)を保険診療で提供しています。
この治療は、歯周病治療完了後に定期的な清掃や歯石除去を行い、再発を防ぐものです。
このように当院では、治療して終わりではなく、患者様のお口の健康を守るため、長期的な管理を大切にしています。